2012年で第2回目に訪れたのは、上野にあります国立西洋美術館で2012年1月29日まで開催される
「プラド美術館所蔵 ゴヤ 光と影」です。
基本的に、この展覧会は「着衣のマハ」と肖像数点を見ることが主だと言って良いでしょう。そのほかの「ロス・カプリチョス」などは、元から西洋美術館のコレクションであるので、プラドから来ている作品は、思ったほど多くありません。
まず、出展作品はゴヤの全作品、創作を俯瞰するには点数が少なく、迫力に欠けます。それに、出展作品123点のうち、100点近くが素描や版画。版画のうち多くは国立西洋美術館の所蔵品。
たしかに「ゴヤ展」なんですけど、「プラド美術館」と銘打つほどなのかは疑問です。あんまり貸してくれなかったんでしょうか。
もちろん、順風満帆だったゴヤが、ナポレオンの侵略以降の社会的混乱から、より人間の闇を見つめるような風刺画などへ作風が変わっていく、という作風の変化は、よく分かります。
そして、その文脈で版画を展示するのは分かるんですよ。重要な作品だと思うので。素描にしても、なかなかちゃんと見る機会は少ないと思うので貴重だとは思います。
でも、華やかさと戦乱の落差や、他に彼が描いている、たとえば
「マドリード、1808年5月3日:プリンシペ・ピオの丘での銃殺」などの彼の重要な作品があるわけではないので、作風や視点の変化についての言及が弱い。
当時のゴヤの言葉を、申し訳程度に壁に書いて変化を紹介しているのですが、そのあたりは作品を借り出せないんだったら、もうちょっと創意工夫をしてもらいたいところではありました。
また、ゴヤの展示については、斬新な視点があるわけでもなく、全体的に散漫な印象を受けました。これなら「着衣のマハ」にフォーカスを当てて、ゴヤが美術史上に果たした役割や、はたまたゴヤの内面に迫るような見せ方をしっかりしたほうがよかったんじゃないかなと思います。
展示自体も、通常の企画展よりも1フロア分少ないわけで。
総合評価 ★★★
少なくとも、個人的には1500円には値しないと思います。
それでも、マドリッドまで「着衣のマハ」を見に行かなくてもいい、ということは、けっこう大きな価値だと思いますので、時間とお金のご相談だと。
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