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もう終わってしまっているので、いまブログで紹介するのも
気がひけるのですが・・・。

東京国立近代美術館で開催されておりました
「ぬぐ絵画―日本のヌード 1880-1945」です。


西洋の「芸術を見る」という文脈を、いかに日本が受容していったか。
あるいは、海外留学組が、いかに広めていったかという軌跡にフォーカスした展覧会です。

 近代化の過程を考える、という点からも「近代美術館」らしい、
素晴らしい視点であったと思います。

 

例えば、明治以前にも裸を描いた作品
(仏像や仁王、春画など)はありますが、
今で言う「芸術」として見るような作品はありませんでした。

それに、当時の日本は西洋や現在と違って、
けっこう人前で半裸状態になっていることに違和感が
なかったりします。

そこで、黒田清輝らが西洋で学んできた裸体画を
広めようとするもわけですけれども、警察から
絵に腰巻をつけさせられたりする始末。

そこで、ありえないほど美化した裸を《智・感・情》という
作品に描いて、あくまでもフィクションだと強調したり・・・。


そんな黒田先生の時代から、すぐに弟子の萬鐵五郎らの、
かなりデフォルメした裸の時代になっていきます。

原色の、萬鐵五郎《裸体美人》などは、まさに先生への
反抗ですよね。

やがて、裸が普通の芸術の主題として
受け入れられていく時代に入ります。そこからは
「もう一度、はだかを作る」というセクションで、
芸術のひとつのテーマとして受容された裸へと移っていくのです。

文明開化まで、文化としてもマインドとしても「裸」という
文脈が無かった日本と芸術家が、苦心して裸との距離を試行し、
鑑賞者を「教育」し、様々に咀嚼していく過程で、
多様な美術を生み出していく。その過程は、まさしく
近代洋画の軌跡なのです。

また、展示されている作品も美しい良品が多い。
ポスターにも起用された黒田清《野辺》は、萌えます。
普通に見ても、見応えがある作品ですね。


一方で、「裸体画の本場」である西洋でさえも「ぬぐ絵画」は時に
スキャンダルとして受け止められてきました。
マネの「草上の昼食」などはそうですし、要は
神話や聖書、歴史以外のヌードは認められて
いなかったという、また日本とは別の文脈があったわけで。

この展覧会のスペースや趣旨からすれば、
そこまでスコープを広げるのは難しいのですが・・・。

会場デザイン、カタログデザインはじめ、
各種のデザインも美しい。
いつもの収蔵品でも見方を変えるだけで
全然違って見るキュレーションが冴えた
展覧会だと思います。



総合評価 ★★★★★(満点)
「普段、私達が芸術の文脈でヌードを見る、ということは
どういう意味があるのか?」という鑑賞者側の意識に迫る
視点には、非常に鋭いものがありました。

また、近代以降の日本の芸術家達が、いかに人間の根源的かつ
多面的な意味を持つ「裸」というものを取り込み、
自分たちの芸術に反映させたか、という歴史は、
それだけで私達が西洋の文化をいかに受容し変容させてきたかを
考える上でも貴重な示唆に富んでおります。


カタログもコンパクトで、内容に比べて良心的な
価格。また、特別展のスペース以外にも、所蔵作品展も
「裸」を描いた作品で統一し、所蔵作品のフロアに導く
工夫もしてあります(そのため、私にとって初見の
作品も展示してありました)

近代美術館としての視点、コレクションの解釈、構成、
どれをとっても刺激的。素晴らしい展覧会でした。





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コンサルタント(自称)
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美術館めぐり、など
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デザインやモバイルガジェットと読書が好き。特にテーマを絞らず、色々と書いてみようかと思っております。
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