明けまして、おめでとうございます!
ことしも紺洲堂をよろしくお願いいたします。
今まで「
紺洲堂の文化的生活」で主に展覧会や美術展について書いてきましたが、今年からゆるく、こちらにシフトしていこうかと考えております。
そして、今年第一弾が、こちら。
「メタボリズムの未来都市展 戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン」です。
これは、見逃せない展覧会です。
もう会期が少ないので、まだ見ていない人はぜひ行っていただきたいと思います。損はありませんよ。
<背景>
戦後日本で興った、建築理論である「メタボリズム」。これは、当時の社会情勢が背景にありました。端的に言えば、
1.戦災によって何もなくなってしまった中から、いち早く復興すること
そして
2.急増する都市人口に対して、より効率よく快適な環境を提供すること
を満たすために、従来の建築のように単体で完結してしまうような建築ではなく、有機的に、生物のように発展や新陳代謝を繰り返していく建築を目指したものです。
詳しくは公式ページの
「1分でわかるメタボリズム」の出来が良いので、ご参照ください。モリナガ・ヨウさんの素敵なイラストがあり、非常にわかりやすいです。
<印象深かったポイント>
この展覧会が秀逸なのは、戦後日本の歩みとメタボリズムを密接に対比させ、様々な戦後復興から南極探検、東京五輪、大阪万博といった戦後の重要なメルクマールにおいて果たした建築の役割を一本筋で眺められるようにしたところでしょう。
たとえば、彼らが最初に考えていたプランなんて、ほとんどSFの世界なんですよ。海上に大きな構造物を作って未来都市を作ったり、人工地盤の上に都市を作ったり。これは、どう考えても実現しないだろ、と。
でも、それだけを見てはいけないんですね。その背景には都市と自然の共生(共生は、晩年に都知事選に出た黒川紀章さんが選挙活動でもテーマにしていましたね)、資源の有効利用、未来での発展余地を残すというバックボーンがあるわけです。
そうした思想と検討が、五輪や万博、都市開発などメタボリストたちが関わったプロジェクトに脈々と受け継がれていたことを、あらためて考えさせられました。
たとえば、万博ならばエキスポタワー、丹下健三の山梨文化会館などは、その典型でしょう。
そしてメタボリズムの思想は海外でのプロジェクトにも反映されていく、という「過去の運動」ではなく、現在から未来まで視点をもっていく構成も、非常に素晴らしかったです。
<個人的なつぶやき>
実は、この「メタボリズム」は人口爆発に対応したものでしたが、人が少なくなってきたときにも、容易に建築の役割を変更することが出来るのでしょうね。たとえば、住居棟が要らなくなれば、そのまま別の用途の部品を導入すればいいわけですし、そこを廃止して、緑地にしてもいいわけですから。
また、必要最低限の機能的な住居も現在なら見直されるかもしれません。例えば、情報機器の小型化と高性能化で、昔より家電の占めるスペースは減りましたし、以前よりもモノを持たないというライフスタイルも実現しそうです。
もしかすると、メタボリズム的な住居は、現在の若い世代の方が受容が高いかもしれませんね。スマートフォンと最低限の荷物を持って職場近くのカプセルに暮らす、という生活は、現代になってみると、かなりアリかもしれないと思いました。
総合評価(満点は5つ星)
★★★★★
芸術や建築だけでなく、戦後日本の歩みを考える上でも外せない思想として「メタボリズム」を位置づけたことが素晴らしい。特に、まだ生きている巨匠たちの協力を得られたこと、東日本大震災後の社会情勢から見ても、いま最も見るべき展覧会
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