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 「オマハの賢人」と言えば、世界第二位の富豪であるウォーレン・バフェット」氏であります。幼少のころから成績がよく、株式投資を大学で学んだあと、コカ・コーラやジレット、ディズニーといった割安株に投資をすることで莫大な利益を得た、史上最強の投資家でしょう。

 一方、この映画の主人公であるウォーレン・シュミット(ジャック・ニコルソン)は、地元オマハの保険会社を定年退職した平凡なサラリーマン。「オマハの凡人」です。おそらく、この二人は対比されているのでしょう(ネーミングからしても)。
 

 シュミットさんの送別会では、立派な生き方をしてきた人だと持ち上げられたものの、実際は何か満たされていない。スーツを着込んで、自分の業務を引き継いだ後輩を訪ねて「何かわからないことはない?」「いえ、別にないですよ」。

 結局残されたのは、なんてことのない郊外住宅地に立つ一戸建て、どうってことのない年相応に老いた妻、シカゴに住む娘。しかも娘の婚約者は、見るからに冴えない。冴えないどころか、品性と言いますか感覚が下品な感じ。それに先方の家族も、この家族でこの息子あり、といった感じ。

 今までの人生って何だったんだろうという、団塊の世代が退職していく中では、身につまされる方も多いかもしれません。

 とにかく、何か満たされない。思い描いていた理想の人生(おそらくウォーレン・バフェット氏のような大成功)とは違った道を歩んでしまって、結局手元に残ったものって、なんだったっけ?というのを探すロードムービー兼コメディ映画ですね。

 世の中、そんなに成功した人ばかりではない、ほとんどは凡人なわけです。絵に描いたような理想の生活なんて現実にはないわけで、だれしも大なり小なりシュミットさんのような人生なのではないでしょうか。

 そんな小市民の人生でも、やっぱり生きてきて良かったナ、ウンと思わせてくれる映画です。定年映画というジャンルがあるとしたら、間違いなくそれに入りますね(他にどんな映画があるかは検討の余地あり)。


 話全体が、単なる老人の独白ではなく、手紙を書くという形式であることにも注目です。だんだんとシュミット氏の内面の変化が、その文面にも表れてきます。

 全体的な演出も、「どうしようもなさ」を上手くストーリーに織り込んでいく手腕も素晴らしい。


 ちなみに本家のウォーレン・バフェットさん、好物はチェリーコークとジャンクフードで、CEOを務める会社から得ている収入も日本円で10万ドルほどだそうです。ほとんどが株式の含み益。しかも、莫大な財産は友人のゲイツ夫妻が設立した慈善財団に寄付するとのこと。そのつつましさが「オマハ的」なのかどうかは知りませんけど、結局この「二人のウォーレン」に限らず「何を残していくか」ということなんでしょうか・・・?





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