世界の競争力について、また発表がありました。
産経新聞のニュース
IZAによると、「世界経済フォーラム」の作成した「経済競争力報告」の発表で、日本の競争力は7位、首位はスイスだそうです。ちなみに2位から4位までを北欧の国々が占めております。
思ったよりも日本の順位は悪くないかもしれませんね。まだまだ日本の底力は残っているようです。
詳しいレポートは
世界経済フォーラムのHPに掲載されているので、参照してみてください。
このニュースでも、フォーラムのエグゼクティブサマリー内(P.15)でも触れられておりますが、北欧の国々の高い競争力の要因のひとつが、高い教育レベルだと言えそうです。
その中でも、競争力ランキング2位のフィンランドの教育事情について書かれたのが、この「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」(福田誠治)です。
何?競争をやめたら学力が世界一になるのか?と、最近の競争社会、成果主義の社会に居りますと半信半疑になってしまいます。ですが、この本を読めば、どういった経緯で高い学力を維持することができるようになったか、が描かれているのです。
ひとことでいえば、フィンランドの教育は、生徒の「やる気」を引き出すことに重点が置かれていることが言えるでしょう。しかも、競争(アメとムチ)方式ではなく、いかに楽しんで生徒自身が学び出すか、に重点が置かれている。
たとえば、フィンランドの学校では、日本では「学級崩壊」と呼ばれているような、児童がフラフラと出歩くような事態でも、先生は怒りません。先生は午後2~3時ぐらいに帰宅してしまいます。授業では子供たちが好き勝手にグループ学習をしています。
それで、なんで競争力が高いの?学力が高いの?同じぐらい学力が高い韓国の学生が死ぬ気で勉強しているのに、フィンランドはそうではないし。
これまでの教育しか知らない方であれば、この本に書かれていることは、目から鱗が落ちると思いますよ。
「競争やめたら」とはいえ、「自分との競争」はありますし、もっといえば全体がともに高めあっていこうという点で「共走社会」といえると思います。一人も落ちこぼれを出さないように、先生ができない子につきっきりで教えたり、となるべくどんな子供でも同じクラスで学習を続けられるように努力しています。グループ学習では、できる子供ができない子供を教えあったりと、レベル別のクラスで競争させるのとは別のモチベーションが子供たちに働いているように思います。自分から勉強したいことを勉強するのは、とても楽しいのです。
確かに、ドリルをやりまくるのも結構でしょうが、それと国際学力調査はあまり関連がなさそうですね。なぜならば、学力の国際比較に用いられているPISAというテストでは、知識量ではなく、いかに考えるか、という考え方自体を問う問題が多いからです。
知識や技術が陳腐化する速度が速く、知識はすでにインターネットを用いれば、どんな秀才が生涯をかけて得るものよりも多くのものを一瞬で得ることができます。
新しい技術と絶えず変化する環境の中で生きていくには、道具である「知識」「情報」「技術」よりも、それを使う自分自身の「思考」が重要であるように思います。
そう考えますと、この本は示唆に富んでおりますね。ただ、教育を変えただけでは変わらないでしょう。それを支える社会システムや国民的な同意が必要だからです。それは、どんな人間を育てるのか、どういう社会をデザインするか、というとても大きなヴィジョンを伴うものだからです。
フィンランドよりも人口が大きく、舵を切るのも難しい日本ですが、教育は国の根幹、人口が減るのならその分、生産性の高い人材を輩出しなければ国が立ち行きません。
ところで、小泉さんがおっしゃっていた「米百俵」って、私は教育にもっと投資する、というヴィジョンを語ったものだったと思いこんでいたのですが、違ったんですね。最近、友人に教えられて気が付きました。
追加:
フィンランドでは現場の教職員に大きな権限を委譲して、先生のモチベーションを高めることも重視しているので、教職員の方が読んでも面白いかもしれません。
また、企業で研修などをする際にも参考になるでしょう。成果主義もよろしいですが、いかに社員のモチベーションを引き出し、学びあい、社内を活性化させるかという点において、参考になる点があるかも。ビジネスは競争ですし、厳しい環境で何が北欧だ!と思うかもしれませんが、社員のやる気を引き出して、付加価値の高い仕事をしてもらうためには、社員の「学力」「人間力」が必要だと思いますよ。
福田 誠治著
朝日新聞社 (2006.5)
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